親・配偶者からの借入金は「資本金」にできる?正しい資金計上の仕方

起業時には多くの資金が必要ですが、必ずしも自己資金だけで賄えるわけではありません。そのため、親や配偶者など親族から資金援助を受ける場合があります。ただし、こうして得た資金を「資本金」として計上するのか「借入金」として処理するのかによって、税務・法務・金融機関の評価が大きく変わります。

そこで本記事では、親族からの資金提供に関する資本金計上・借入金処理のポイントや注意点をわかりやすく解説します。

身内からの資金調達:なぜ多くの起業家が選ぶのか

身内からの資金援助は迅速で柔軟な調達ができる一方、特有のリスクも存在します。そこでまず、メリットと注意点について解説します。

資金調達

身内からの資金援助が選ばれる理由とメリット

起業にあたり、親や配偶者からの資金提供を受けるのは、多くの起業家にとって現実的かつ非常に身近な選択肢のひとつです。まず金融機関の審査が不要なため、事業計画がまだ明確になっていない段階でも、迅速に資金が調達できます。

また、返済条件や利息についても、親族間であるため柔軟に決定でき、返済猶予や低金利(あるいは無利息)なども望めるかもしれません。さらに、身内からの援助であれば信用情報に影響がないため、将来の融資枠にも余裕を持たせられます。

このように、創業時の資金難を乗り越えるため、身内からの支援は非常に有効な手段となります。

親族間融資特有の留意点とトラブル回避の重要性

一方で、親族間での資金提供には特有のリスクも伴います。まず、口約束だけで資金を受け取ると、贈与とみなされ贈与税の課税対象となる可能性があります。

また、返済に関する認識違いや生活状況の変化が原因となり、家族間トラブルが生じることもめずらしくありません。それだけでなく、税務署も親族間取引は厳しくチェックするため、契約書の整備や資金移動の証拠は必ず残しておかなければなりません。

このような理由から、親族だからといって甘えず、第三者間取引と同様に文書化とルール整備を徹底することが重要です。

親族

親や配偶者からの資金を「資本金」として計上するには?

資本金として計上するには、単なる資金提供ではなく、法律上の「出資」として正しく処理する必要があります。ここでは、手続きや税務上の注意点について解説します。

会社の「資本金」とは?その役割と重要性

資本金とは、会社設立時や増資時に出資された資金のことで、会社の自己資本の中心となるものです。資本金が多ければ、金融機関や取引先からの信用力も高まり、融資や取引条件の面で有利になります。

ただし、資本金の額が一定以上になると、外形標準課税や軽減税率の適用可否にも影響する場合があります。また、税制優遇措置に関わる基準ともなるため、資本金の額は単なる出資額以上の意味を持っています。

親族からの資金を資本金とするための要件と手続き

親族からの資金提供を資本金とするためには、返済義務のない「出資」としての扱いが必要です。出資時には、払込証明書や出資契約書を整備し、登記申請書類とともに法務局に提出します。これにより資本金の増資が正式に認められます。

これは増資を行う場合も同様で、株主総会の決議や発行株式数の変更登記などの法定手続きが必要です。こうした書面の整備が、金融機関や税務署に対して出資の実態を証明する際の資料として重要となります。

資本金計上における贈与税のリスクと注意点

親族からの出資は、贈与とみなされるリスクがあるため注意が必要です。贈与税には年間110万円の基礎控除がありますが、それを超える資金提供に対しては、贈与税が課される可能性があります。

ただし、親族が正式な株主となり、出資割合に応じた株式を保有しているのであれば、贈与ではないため贈与税が課税されることはありません。ですが、実質的には出資ではなく贈与であるような場合は、税務署から否認される恐れがあります。

出資ではなく「借入金」として計上する場合の注意点

出資ではなく借入金として処理する場合も、契約内容や返済の実態によっては、贈与とみなされる場合があります。この章では、借入金として処理する場合の注意点について解説します。

「金銭消費貸借契約書」を作成する

親族からの資金を借入金として計上する際には、「金銭消費貸借契約書」を作成しなければなりません。契約書には借入額、返済期間、返済方法、利率、遅延損害金などを具体的に明記します。

こうして、資金を借り入れた実態を書面として残しておけば、紛争の防止や税務調査時の証拠資料とすることができます。特に、返済期日や返済方法をあらかじめ明確にしておけば、後のトラブルが避けやすくなるので必須です。

契約書

適正な金利を設定し返済を行う

親族間借入で問題になりやすいのが、金利の設定です。無利息や極端な低金利は、利息相当額の贈与と判断されるリスクがあります。したがって、国税庁が公表する特例基準割合などを参考に、公正かつ根拠のある適正な金利を設定しておかなければなりません。

また、返済にあたっては現金でのやり取りは避け、口座振り込みを行い、必ず記録が残るようにしておきましょう。

親族間借入で税務調査に備える方法

税務署は、親族間の金銭移動には、厳格な監視の目を光らせています。形式的な契約書のみで、返済の実態が伴わない場合、贈与税の課税対象となりかねません。

税務署は、契約書の有無や返済履歴、金利の割合などを重点的に確認します。「契約書は作成されていたが、実際には返済が1円も行われていなかった」「返済はしていたが、金利部分が支払われていなかった」といった実態が税務調査で明るみに出れば、贈与税の課税処分が行われかねません。

したがって、単に契約書を整備するだけでなく、その内容に即した返済を行わなければなりません。

金融機関や税務署が見る「資本金の出所」

金融機関や税務署は、資本金の出所についてもチェックする場合があります。したがって、こうした点にも注意が必要です。

金融機関が融資審査で「資金の出所」を重視する理由

資金のチェック

資本金が多ければ、企業経営は安定しやすくなります。したがって、金融機関が融資の審査をする場合、資本金の金額やその内訳は、非常に重要なポイントとなります。 では仮に、実質的には返済義務のある資金を資本金として処理していたら、どうでしょうか?もし、金融機関がその情報を鵜吞みにしてしまったら、実際の実力以上の評価をしてしまい、正しい融資審査ができなくなります。

こうしたことから、金融機関は審査の際、契約書の内容や資金の移動履歴、株主持分の状況などを細かく確認し、資本の実態を慎重に見極めるわけです。

税務署が親族間資金移動をチェックするポイントと贈与認定リスク

税務署は、親族間で行われる資金移動の実態を重視して確認します。これは、形式上は出資や借入とされていても、実際には贈与に該当するケースがあるためです。

たとえば、出資名義と実際の資金管理者が異なっていたり、借入契約があっても返済が行われていなかったりする場合は、実質的に贈与と判断されやすくなります。したがって、税務調査での否認リスクを防ぐためには、契約書などの整備はもちろん、通帳の振込履歴や返済状況など、資金の流れを客観的に証明できる資料を用意しておかなければなりません。

まとめ

親や配偶者からの資金提供は、起業時の大きな助けとなりますが、資本金として計上する場合も借入金として計上する場合も、どちらも正しい手続きを踏まなければなりません。親族間だからといって安易に処理を行ってしまうと、贈与税が課税されかねません。

こうした事態を避けるためには、設立手続きを進める前に税理士などの専門家に相談し、契約書類の整備や資金移動の透明性を確保するように心がけると良いでしょう。

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