
起業直後は、営業や商品開発に意識が向きやすく、事務まわりの体制は後回しになりがちです。けれども、資金の流れや情報の管理を整えておかなければ、後々の業務に支障をきたす恐れがあります。特に法人を設立したばかりの段階では、最低限のバックオフィス機能を早めに整えることが大切です。そこでこの記事では、起業後に押さえておきたい5つの整備ポイントについて、初心者にもわかりやすく紹介していきます。
目次
そもそもバックオフィスとは?
まずは、バックオフィスの役割や重要性を確認し、なぜ整備が必要なのかを理解しましょう。
バックオフィスとフロントオフィスの違い
バックオフィスとは、経理や労務、得意先などとの契約管理など、会社の運営を裏から支える業務のことです。これに対して営業やマーケティングなど、顧客と直接関わる業務はフロントオフィスと呼ばれます。
バックオフィスは表には出にくいものの、会社の土台を支えるための重要な機能です。請求書の発行、会計処理、入退社手続きなど、日々の業務を安定させるために欠かせない役割を果たしています。起業直後は人手も限られているため、こうした業務が後回しになりやすいのですが、放置しておくと重大なトラブルの原因にもなりかねません。
なぜ起業初期に整えるべきなのか
起業したばかりの時期こそ、バックオフィスを整える意義は大きいと言えます。なぜなら、業務の整理が事業全体の効率に直結するためです。
例えば、経費の記録が曖昧だと、いざ確定申告や税務対応が必要になった際に、過去の取引内容をさかのぼって確認するのに時間がかかってしまいます。また、契約書や書類の管理が適当だと、思わぬトラブルを招くリスクも高まります。
こうしたことから、スタートアップ段階でこそ、業務のルールを定め、記録をきちんと残す習慣を作ることが、将来の成長と安定につながるわけです。
やっておきたい5つのバックオフィス整備
バックオフィスの整備は、事業の土台をつくるうえで欠かせない取り組みです。後回しにするとトラブルの原因になりやすいため、早い段階から着手しておくことが大切となります。そこで本章では、起業直後に押さえておくべき5つのポイントについて解説します。
1. 【銀行口座とクレジットカード】事業用とプライベートを分ける
事業を始めたら、まず個人用とは別に、事業専用の銀行口座とクレジットカードを用意しましょう。プライベートと事業のお金を同じ口座で管理していると、取引の内容を後から見直す際に手間がかかるだけでなく、経費や売上の区別が曖昧になり、正確な記帳や税務申告にも支障が出てしまいます。
個人事業であれば、屋号のついた事業用の銀行口座を設立しておくと良いでしょう。法人の場合も法人の銀行口座設立は欠かせません。ただし、個人と比べ口座の開設までに時間がかかるケースが多いため、注意が必要です。
口座を開設したら、事業用のクレジットカードも準備しておきましょう。事業用クレジットカードを使えば、経費の自動記録やキャッシュレス決済による効率化も期待できます。会計ソフトと連携できるクレジットカードであれば、帳簿づけや試算表の作成、確定申告などもスムーズに行えるでしょう。
2. 【クラウド会計ソフト導入】経理初心者でも自動化でミスと手間を削減
経理業務に不慣れな起業初期こそ、クラウド会計ソフトの導入が効果的です。銀行口座やクレジットカードと連携させれば、取引データが自動で取り込まれるため、仕訳作業の負担を大幅に軽減することが可能です。手書きや表計算ソフトでの記帳はミスが発生しやすく、申告の時期になって慌てて見直すことになりがちですが、クラウドソフトを活用すれば日々の記録が簡単になり、正確性も向上します。さらに、税理士との共有もスムーズになるため、業務の属人化を防ぐことにもつながります。
会計ソフトによっては無料で使えるプランもあり、事業の成長にあわせて機能を拡張できるのも魅力です。早い段階で導入しておけば、帳簿づけの習慣が自然と身につき、経理への苦手意識も軽くなっていくでしょう。
3. 【キャッシュフロー管理】黒字倒産を防ぐお金の流れの見える化
売上が出ていても、手元に現金がなければ会社は回りません。これが、いわゆる「黒字倒産」と呼ばれる状態です。
特に、起業直後は入金と支払いのタイミングが不安定なことも多いため、キャッシュフローの管理ができていないと、知らないうちに資金繰りが悪化してしまいかねません。したがって、現金の流れを把握することが重要です。
これを、キャッシュフロー管理と言います。帳簿上の利益だけでなく、いつ、いくら現金が必要なのかを見通しておけば、早めの資金調達や支払い計画の見通しを立てることが可能です。日々の入出金を記録し、先を見据えた資金計画を立てることで、余計な不安に振り回されずに済みます。安定した経営を目指すには、利益より先に「現金」を意識することが大切だと言えるでしょう。
4. 【業務用メール・チャット・カレンダーの整備】仕事のやりとりは私用と分ける
起業直後は、プライベートのメールアドレスやLINEなどでやりとりを済ませてしまうケースも少なくありません。しかし、業務の情報を私用のツールに混在させてしまうと、連絡の漏れや履歴の混乱が起きやすくなります。
そこで、ビジネス用のメールアドレスやチャットツール、カレンダーを早めに整備しておくことが重要です。メールに関しては、独自ドメインを取得しておくことで信頼感が高まり、取引先への印象も良くなります。チャットやカレンダーも、社内の情報共有やタスク管理を円滑にするうえで役立ちます。Google WorkspaceやMicrosoft 365など、リーズナブルに導入できるツールも充実しています。
最初から業務と私用をきちんと分けておくことが、後々の混乱を防ぐ重要なポイントとなるでしょう。
5. 【契約書の保管と確認】とりあえずの契約はトラブルの元
起業初期は、スピード感を重視して、契約内容を深く確認しないまま取引を進めてしまうことがあります。しかし、契約書の内容を十分に確認せずに進めた結果、後で認識の違いが判明してトラブルにつながるケースは少なくありません。
契約書は「とりあえず」ではなく、内容をしっかり理解したうえで交わすべきです。また、紙の書類を机の引き出しに入れたままにせず、スキャンしてクラウドで管理するなど、保管方法にも工夫が必要です。万が一のときにすぐ確認できる状態にしておけば、不測のトラブルにも落ち着いて対応できます。契約は信頼の証でもあります。大切な書類をきちんと扱うことが、取引先との信頼関係を築く第一歩と言えるでしょう。
まとめ
バックオフィスの整備は、起業直後から取り組んでおくことで、将来のトラブルや行き違いを防ぐ土台となります。資金の管理や書類の整理など、基本的なことから少しずつ整えていくことで、日々の業務もぐっと進めやすくなります。自分ひとりで判断が難しいと感じる部分は、税理士などの専門家にアドバイスをもらいながら進めるのもよいでしょう。信頼できるバックオフィスの体制を築くことが、事業の安定と成長への第一歩になります。