顧問税理士を変更することは、経営者にとって重要な決断の一つです。現状のサービスやサポートなどに不満がある場合、変更を検討するのは自然な流れです。
しかし、顧問税理士は一般のサービス業とは異なり、変更にはリスクも伴うため、慎重な検討が必要です。そこで本記事では、顧問税理士の変更に伴うリスクやタイミング、スムーズに進めるための流れなどについて解説します。
目次
顧問税理士を変更するリスク
顧問税理士を変更すると、税務に関する一部の場面で、リスクが生じる可能性があります。この章では、主に発生しうるトラブルやその影響、回避するための方法について詳しく解説します。
税理士変更で起こる3つの主なトラブル
税理士を変更する際には、主に3つのトラブルが発生する可能性があると考えられます。
- 過去の財務データの保存不足・・・過去の財務データが適切に保存されていない場合、申告内容が不完全になるリスクがあります。このような場合、税務署への対応が遅れたり、余分な調査を求められたりすることもあります。
- 申告書や重要資料の不備・・・旧税理士から新税理士への引継ぎが不十分だと、申告書類の不備が生じることがあります。そのため、申告書の作業が複雑化したり、税務署などから追加の書類を求められたりする可能性があります。
- 業務の遅延や連絡ミス・・・新しい税理士との業務連携が不十分だと、税務に関するスケジュールが遅延し、申告書などの提出期限を守れなくなるリスクがあります。また、連絡ミスによって、業務に支障をきたす可能性もあります。これを防ぐためには、スムーズなコミュニケーション体制を整えることが必要です。
こうした状況にならないようにするためには、事前に十分な準備をしておかなければなりません。
税務署への対応の影響と注意点
顧問税理士の変更が税務署への対応に与える影響についても、注意が必要です。特に、過去の申告内容に関して間違いなどがある場合、税務署からの問い合わせに回答するのが難しくなることが考えられます。こうした事態を防ぐためには、以下の対応をしておくと良いでしょう。
- 新しい税理士にあらかじめ相談し、必要となるすべての書類を前の税理士から回収する
- 新しい税理士と事前に詳細なミーティングを行う
- 税務署対応の責任範囲を明確にする
それでも税理士を変更するタイミングとは
上述のように、顧問税理士の変更にはリスクが伴います。それでも「変更した方が良い」と思われるタイミングとは、一体どのようなものなのでしょうか?
税理士を変更すべき5つの状況
顧問税理士を変更する必要があると思われる場面は、主に以下の5つです。
- サービスの質が低下した場合・・・現在の税理士の対応が遅かったり、求めるアドバイスが不十分であると感じたりする場合は、変更を検討すべきです。例えば、税務調査が入った際に迅速な対応ができない場合や、税務申告にミスが続くような場合は、経営に深刻な影響を及ぼす可能性があります。こうした状況を回避するためには、信頼できる税理士への切り替えが必要です。
- コミュニケーションの問題・・・こちらの質問や依頼に対する回答が曖昧であったり、返信が遅かったりする場合、税理士との信頼関係を築くことは難しいです。経営者が日々の業務に集中するためには、税理士とのスムーズな連携が必要です。税理士とのコミュニケーションが原因で業務効率が下がるような場合は、早めに改善策を講じることを検討しましょう。
- 事業規模の変化・・・事業が成長し、小規模から中規模、あるいは大規模へと規模が拡大した場合、より高度な税務戦略やアドバイスが求められます。また、規模が大きくなると、税務処理の複雑さが増し、専門性の高い税理士が必要になることがあります。このような場合は、事業規模に見合った税理士に切り替えた方が良いでしょう。
- 新規事業や事業内容の転換・・・新しい分野の事業に参入する場合や、事業内容を大きく変更する場合は、分野に特化した専門知識を持つ税理士が必要です。例えば、IT業界や医療業界など、それぞれの分野で独自の税務処理や法律がある場合、それに詳しい税理士に切り替えることで、スムーズな事業展開が可能になります。
- コストの見直し・・・税理士費用が現在のサービス内容に見合っていないと感じる場合も、変更を検討すべきです。他の税理士と比較して費用対効果が悪い場合や、より手厚いサポートをリーズナブルな価格で提供する税理士がいる場合、コスト削減を目的として切り替えるのも一つの手段です。
これら5つのどれかに該当している場合は、顧問税理士の変更を本格的に検討した方が良いでしょう。
税理士変更する流れと注意点
税理士変更をスムーズに行うためには、以下の流れに沿って進めて行くと良いでしょう。
税理士変更のための具体的な流れ
税理士を変更する際には、計画的に進めていくことが大切です。以下に、変更プロセスの具体的な流れを解説します。
- 1. 現状の見直し・・・まず、現在の税理士サービスに対する満足度や課題を明確にします。具体的には、サービスの質、対応速度、費用対効果などを客観的に評価します。この段階で不満点や改善が必要な点をリストアップしておくことで、次の税理士に求める条件が明確になります。
- 2. 新しい税理士の選定・・・候補となる税理士を探し、自社のニーズに合った専門性を持つ税理士を選びます。この際、候補の税理士が対応可能な業務範囲や得意な税務分野、顧問先の主な業種などを確認しておくと良いでしょう。また、相談の際に、コミュニケーション能力やご自身との相性などを直接確認するのも効果的です。
- 3. 契約内容の確認・・・現在の税理士との契約内容を確認し、解約手続きに必要な条件を把握します。契約期間や解約の通知期限を守ることがトラブル回避につながります。同時に、新しい税理士との契約条件(費用、支払い方法、業務内容など)も確認しておかなければなりません。
- 4. 引継ぎの準備・・・会計ソフトなどの財務データや申告書類、過去の税務調査に関する資料など、必要な情報を整理します。その際には、旧税理士とのスムーズなコミュニケーションが欠かせません。また、新税理士が引継ぎを迅速に進められるように、データの形式や資料を提供するタイミングなどについて、事前に相談しておくと良いでしょう。
- 5. 実務開始・・・新税理士との契約が締結されたら、実務を開始します。この段階では、詳細な打ち合わせが必要です。これからの業務の進め方や目標、スケジュールなどを共有し、双方がスムーズに業務を進められるようにします。また、最初の数ヶ月間は特に密なコミュニケーションを心掛け、信頼関係を築くことも重要です。
税理士を変更する際の注意点
税理士を変更する際には、いくつかの重要な注意点があります。まず、変更のタイミングを慎重に選ぶことが大切です。特に決算期直前や税務調査が進行中の場合は、引継ぎに手間がかかるため、できるだけ避けた方が良いでしょう。
また、税理士との契約解除をスムーズに進めるためには、あらかじめ契約内容や解約条件を確認し、適切な手続きを踏む必要があります。さらに、過去の財務データや税務書類の引継ぎを確実に行うためには、必要な書類リストを作成し、旧税理士と新税理士の間で円滑な情報共有を図ることが大切です。これらを怠ると、業務の遅延や税務署対応の問題が発生するリスクが高まるため、注意しておいた方が良いでしょう。
まとめ
顧問税理士の変更をスムーズに行うためには、タイミング選びが大切です。変更後に問題が生じないようにするためには、決算期後や年度初めなどの適切な時期を選ばなければなりません。
また、新しい税理士選びでは、専門性や費用対効果、対応力などを重視し、信頼関係を築くことが大切です。顧問税理士の変更は、計画的に行い、自社に最適なパートナーを選定するように心掛けましょう。そうすれば、経営を前進させる大きな機会が得られるはずです。