法人で株式投資する方法を税理士が解説|起業1~3年目の注意点

会社を設立して1〜3年が経ち、ようやく経営が軌道に乗ってくると、手元の資金に余裕が出てきます。この資金を、投資などに使うことはできるのでしょうか?本記事では、起業したての経営者を対象に、法人で株式投資を始めるためのステップや注意点について解説します。

法人で株式投資はできる?できない?

はじめに、法人名義で行う株式投資について解説します。

法人で株式投資の疑問

法人口座を作れば、個人と同じ銘柄に投資できる

投資会社のような特殊な会社ではなく、一般の業務を行う事業会社でも、株式投資はできるのでしょうか?最初に結論から申し上げると、法人であっても、個人と同じように上場株式や投資信託を購入することができます。ですから、起業したばかりでも、会社のお金を使って資産形成を始めること自体に制限はありません。

ただし、会社の名義で取引を行うと、その利益や損失はすべて会社の収益としてカウントされるため、最終的な法人税の計算に影響が生じます。また、その結果は経営者だけでなく、他の株主に対してもその影響が及びます。この点は、個人で行う投資とは大きく異なります。

事業目的に「株式投資」と書かれていなくても大丈夫?

投資を主たる業務としている会社を除けば、会社のルールブックである「定款」の事業目的に、株式投資に関する記載がない会社も珍しくありません。こうした会社は、株式投資が行えるのでしょうか?結論から言えば、定款の事業目的に書いていなかったとしても、基本的には問題ありません。実際に多くの会社では、余剰資金の運用という形で、幅広く投資が行われています。

ただし、将来的に投資を事業の柱の一つにしたい場合や、融資や出資を受ける際の整合性が問題になりそうな場合は、事業目的の追加を検討しておいた方が良いでしょう。

法人で株式投資を始めるまでの流れと必要な準備

法人で投資を始めるには、個人とは異なる事務手続きが必要です。ここでは、法人で株式投資を始めるまでの流れやその準備について解説します。

口座開設

1.口座を開設する

はじめに、法人取引に対応している証券会社を選びます。各社の手数料や今後の取引などを踏まえたうえで、自社の状況に適した証券会社を選びましょう。法人口座は個人口座よりも審査が厳しいため、完了までに数週間かかることがあります。そのため、法人で株式投資を予定している方は、口座開設の申し込みを早めに済ませておいた方が良いでしょう。

2.法人特有の必要書類を準備する

法人口座の開設には、個人では使わない書類がいくつか必要になります。代表的なものとしては、履歴事項全部証明書(登記簿謄本)や法人の印鑑証明書などが挙げられます。

これらは、発行から3ヶ月以内といった期限が設けられていることが多いため、できるだけ最新のものを準備しておいた方が良いでしょう。それ以外にも、実質的支配者(株主など)の確認書類や、代表者の本人確認書類が必要な場合があります。

3.会社の「余剰資金」を正しく計算して入金する

口座ができたら、いよいよ資金の入金です。ここで重要なのは、どれくらいが投資に回していいお金かを、正確に算定することです。

起業初期は、急な出費や本業の入金遅れでキャッシュが不足しがちです。最低でも半年分程度の運転資金を手元に残し、それでも使い道が決まっていない純粋な余剰資金がどれくらいあるのかを、正確に計算しておきましょう。

この計算を誤ると、本業の支払いのために、株式を売却することになりかねません。そのため、こうした計算が苦手な方は、税理士などの専門家に相談してから決めるようにしましょう。

法人株式投資のメリットとデメリット

法人での株式投資には、余剰資金の有効活用をはじめとするさまざまなメリットがある反面、いくつかのデメリットもあります。ここでは、知っておくべき代表的なメリットとデメリットについて解説します。

法人株式投資のメリットとデメリット

【メリット】余剰資金を有効活用できる

法人が株式投資で得られる最大のメリットは、余剰資金を効率的に運用し、本業以外の収益が上げられることです。法人に余剰資金があったとしても、普通預金に預けていては、金利はほとんどつきません。ですが、株式に投資して上手に運用できれば、状況次第ではありますが、かなりの収益が期待できます。

また、株式の売買で得た収益は本業の収益と合算されるため、本業が赤字の時に売却すれば、税金を大幅に減らすことができます。こうした点は、法人で株式投資を行う際の大きなメリットと言えるでしょう。

【デメリット】含み益に課税されるリスクがある

法人で株式投資を行うにあたり、短期的な売買を目的としていると判断されると、株式を売却していなくても、値上がりした分の「含み益」に対して税金が課税されることがあります。「売ってもいない株式に対して税金を支払うのはおかしい!」と思われるかもしれませんが、購入した株式の保有目的次第では、こうした事態も生じかねません。

また、本業が大幅に赤字になったり、事業拡大のため資金が必要になったりすれば、株式を売却して現金化しなければなりません。ですが、その時運悪く株価が下がっていれば、損切りをすることになってしまいます。これらの点は、大きなデメリットと言えるでしょう。

起業初期に法人で株式投資をする際の注意点

起業初期に株式投資をする場合、本業にプラスの効果をもたらす反面、やり方を間違えると会社の資金繰りや信用に致命的なダメージを与えることも考えられます。そこで最後に、注意すべき点を紹介します。

株式投資の効果

余剰資金はどれくらいなのかを適正に見極める

法人での投資は、大前提として、本業に一切支障が出ないお金(余剰資金)で行わなければなりません。しかし、この余剰資金の算出は、通帳の残高を見るほど単純ではありません。

日々の運転資金を正確に把握し、設備投資や人材の採用計画、予期せぬトラブルへの備えなど、将来の事業計画に基づいた資金需要をすべて考慮に入れたうえで、算出しなければなりません。なぜなら、余剰資金の計算を誤ると、会社のキャッシュを圧迫し、経営そのものが立ち行かなくなってしまうからです。

こうした資金繰り表の作成や将来予測に不安がある場合は、株式投資を行う前に、税理士などの専門家に相談しておいた方が良いでしょう。

適切な会計処理を行う

中小企業が株式投資を行うにあたり、最も注意すべきことは、含み益に対する課税です。これを避けるためには、短期的な売買目的ではないことを明確にし、会計上も適切に区分しておかなければなりません。

ただし、会計処理を行う際に区分をどうすべきかの判断には、正しい税務知識が必要です。万が一間違えると、税務調査でペナルティを受けることもあるだけに、事前に専門家に相談しておいた方が良いでしょう。

まとめ

法人での株式投資は、正しく活用すれば、本業の赤字を補填して経営を安定させる強力な武器になります。しかし、会計処理を誤ってしまうと、含み益に課税されかねません。こうした事態を防ぎ、安心して余剰資金を運用するためには、事前に税理士などの専門家に相談しておくと良いでしょう。

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