
起業すると、多くの方が、経費の支払いやETCカードの利用などに便利な法人カードを作ります。ですが、法人カードは個人カードとは仕組みが異なるため、正しく理解し、使い分けることが非常に大切です。
法人カードを活用すれば経費管理がしやすくなり、事業の信用力向上にもつながりますが、個人カードをビジネスで使うと、税務や信用面でのリスクが生じかねません。そこで本記事では、法人カードと個人カードの違いや、それぞれの適切な使い方について解説します。
目次
法人カードと個人カードの違いとは?
法人カードと個人カードは、用途や審査基準、特典など、いくつかの点で違いがあります。また、法人カードは事業の経費管理に特化しており、個人カードとは発行の仕組みも異なります。そこで、まずは法人カードと個人カードの基本的な違いを確認し、どのようなケースで法人カードを使うべきか、また個人カードが適している場面について解説します。

法人カードと個人カードの基本的な違い
法人カードと個人カードは、主に以下の点で両者は大きく異なります。
1.発行の仕組みの違い・・・法人カードは、企業や個人事業主向けに発行され、審査では事業の信用や財務状況が重視されます。一方、個人カードは申し込み者本人の信用情報をもとに審査が行われるため、個人の収入やクレジットヒストリーが重要視されます。
2.利用目的の違い・・・法人カードは事業に関わる経費の支払いに特化しており、従業員向けの追加カードを発行できる場合もあります。一方、個人カードは私用の支払いを目的としており、事業用の経費をまとめて管理するには適していません。
3.特典やサービスの違い・・・法人カードには、経費管理ツールや高額決済に対応できる仕組みが整っています。一方、個人カードは、ポイント還元や旅行保険など、個人のライフスタイルに寄り添った特典が多いのが特徴です。
4.会計処理や税務上の影響・・・法人カードを利用すれば、事業経費を明確に区分でき、会計処理や確定申告がスムーズになります。一方、個人カードを経費に使うと、支出の区別が曖昧になり、税務調査で問題となる可能性があります。
法人カードが適しているケース

法人カードは、事業の経費管理を効率化したい場合に有効です。特に、以下のような場合は、法人カードが適しています。
1.経費の支払いが多い場合・・・事業用の支払いが頻繁に発生する場合、法人カードを利用すれば支出を一本化でき、経理業務の負担を軽減できます。
2.従業員がいる場合・・・法人カードは追加カードを発行できるため、従業員の出張費や備品購入などの管理がしやすくなります。
3.キャッシュフローを安定させたい場合・・・法人カードの支払いは後払いのため、一時的な資金繰りを調整しやすくなります。特に、仕入れや広告費などの高額な支払いがある事業には便利です。
このようなケースで法人カードを利用すると、経理や資金管理がスムーズになるため、事業の成長をサポートする強力なツールとなるでしょう。
個人カードを使うべきケース
法人カードは事業用の決済に便利ですが、必ずしもすべての起業家が持つべきとは限りません。例えば、事業を始めたばかりで経費の支払いが少ない場合は、個人カードを活用する方が、手間がかからずコストを抑えられることもあります。
また、法人カードには審査があるため、開業直後で信用情報が十分でない場合には、しばらくの期間は個人カードを活用するという選択肢もあります。さらに、個人カードには年会費無料のものや、ポイント還元率の高いものが多いため、少額の事業経費であれば、管理に適している場合も少なくありません。
ただし、個人カードで事業経費を管理すると、私的な支出と混ざりやすく、経理が煩雑になるため、状況に応じた使い分けが必要です。
法人カードのメリット・デメリット
法人カードには、経費管理の利点がある一方で、審査やコスト面で注意すべき点もあります。ここでは、法人カードを利用することで得られるメリットと、導入時に気をつけるべきデメリットについて解説します。

法人カードのメリット
法人カードを導入する最大のメリットは、経費管理の効率化です。事業に関する支払いを法人カードで統一すれば、取引の記録が明確になり、経理業務の負担を軽減できます。
また、利用明細を会計ソフトと連携できるカードもあり、手作業での入力を減らすことが可能です。さらに、法人カードにはポイント還元やキャッシュバックの特典があり、経費の支払いを通じてコスト削減にもつながります。それだけでなく、支払いが後払いのため、キャッシュフローの調整もしやすくなり、資金繰りの安定にも貢献します。
法人カードのデメリット
法人カードは便利な反面、導入にあたって注意すべき点もあります。まず、審査が厳しいことが挙げられます。特に創業間もない企業や個人事業主の場合、信用情報や財務状況によっては審査に通らないこともめずらしくありません。
また、多くの法人カードは年会費がかかるため、コスト負担を考慮する必要があります。さらに、従業員に追加カードを発行する場合、利用状況を適切に管理しないと、不正利用や経費の使いすぎといったリスクが生じる可能性もあります。
このように、法人カードは資金管理の面で有益ですが、事前にデメリットを理解したうえで導入を検討することが重要です。
法人カードのかしこい使い方
法人カードを最大限に活用するには、適切な管理と効果的な運用が欠かせません。ここでは、経費精算のスムーズな進め方や、ポイントや特典の活用法について解説します。

経費精算をスムーズにする方法
法人カードを効果的に使うには、経費管理を徹底することが重要です。まず、カードの利用ルールを明確にし、どの支払いに法人カードを使うのかを社内で統一しておくと、経理処理がスムーズになります。
また、利用明細を自動で会計ソフトに取り込めるカードを選べば、手作業の負担を減らせるでしょう。さらに、従業員に追加カードを持たせる場合は、利用制限を設定することで不正利用を防げます。
ポイントや特典の活用
法人カードを上手に活用すれば、経費削減や業務効率化につなげることができます。多くの法人カードには、利用額に応じてポイントやキャッシュバックの特典が用意されているため、これらを活用すれば、実質的なコスト削減が可能です。
特に、広告費や出張費などの高額な支払いを法人カードで行えば、ポイントを効率よく貯められます。また、法人向けの優待サービスとして、空港ラウンジの利用やビジネスサポートサービスが付帯するカードもあるため、出張や取引先との会食などで役立つ場面も多いでしょう。こうした特典を活かせば、法人カードをより効果的に運用できます。
個人カードをビジネス利用するのはNG?リスクと注意点
個人カードを事業用に使うと、税務上の問題や信用情報への影響が出る可能性があります。ここでは、個人カードをビジネスに利用する際のリスクや注意点を解説します。

税務上のリスク
個人カードで事業経費を支払うと、経費と私的な支出の区別が曖昧になり、確定申告の際にトラブルの原因となることがあります。特に、税務調査が入った場合、事業用と個人用の支出を明確に区分できなければ、経費として認められない可能性もあります。また、帳簿管理が煩雑になるため、経理業務の負担が増える点もデメリットです。
信用リスクとキャッシュフローへの影響
個人カードをビジネスに利用すると、信用情報や資金繰りの面でリスクが生じる可能性があります。個人カードの利用履歴は、個人の信用情報に記録されるため、事業での支払いが増えると、個人の負債が増えたと判断されることがあります。
その結果、住宅ローンや新たなクレジットカードの審査に影響を与える可能性もあるでしょう。また、一般的に個人カードの利用限度額は低いため、高額な仕入れや広告費の支払いに対応できないこともあります。
まとめ
本記事で述べたように、法人カードと個人カードには明確な違いがあるため、適切に使い分けることが大切です。個人カードを事業用に使うと、税務上のリスクや信用情報への影響が生じる場合があります。事業を安定的に運営するためには、法人カードを導入し、正しく活用することをお勧めします。法人カードを利用すれば、経費管理がしやすくなり、キャッシュフローの安定も期待できるでしょう。