会社のお金を、代表取締役などの役員に貸す場合、利息は取る必要があるのでしょうか?経営者側から見ると、「自分の会社から自分が借りるのだから、利息なんて必要ないだろう」と考えがちですが、果たしてそうでしょうか?
本記事では、役員貸付金に関する基本的な考え方や適正利率の定め方、税務調査で指摘されない管理方法まで、丁寧にじっくりと解説します。
目次
そもそも役員貸付金に利息は必要?
自分が作った自分の会社なのだから、お金のやり取りに利息なんて支払う必要はないだろうと考える役員も多いかもしれませんが、果たしてそうでしょうか?はじめに、役員貸付金に対する税務上の考え方について整理してみます。
役員貸付金とは
役員貸付金とは、読んで字のごとく、会社が役員に対して貸し付けた貸付金のことです。ちなみに、役員以外の第三者や他の法人などに資金を貸し付ける場合もありますが、こうしたケースでは一般的に、貸付金勘定が用いられます。
ではなぜ役員に貸し付ける場合に、役員貸付金勘定を用いるのでしょうか?それは、会社と役員の関係が第三者同士ではない場合が多いため、税務上非常に厳しく見られるからです。

利息が必要とされる理由
役員貸付金には、原則として利息を設定しなければなりません。なぜなら、会社が役員に無利息で貸すと、税務上役員に利益を与えたとみなされる場合があるからです。会社は、銀行からお金を借りると、返済時には元金だけでなく金利も支払います。反対に、会社が第三者にお金を貸す場合も、同様に金利を受け取ります。
では、役員に貸す場合だけ、金利を課さなかったらどうでしょうか?形こそ違えども、実質的に金利分に相当する給与や賞与を与えたのと変わりません。したがって、役員にお金を貸し付けて金利を受け取らなければ、税務調査でペナルティが課されかねません。
こうした事情により、会社が役員に対して資金の貸し付けを行う場合には、利息を受け取らなければならないのです。
利息を付けなくても良い例外ケース
ただし、例外的に利息を設定しなくても問題にならない場合があります。例えば、貸付金の金額が少額で、会社や役員の負担がほとんどない場合です。たとえば、役員に1万円を貸し付けて翌日返してもらった場合、正しく金利を計算しても、非常に少額にしかなりません。こうしたケースでは、あえて利息をつけなくても、税務調査で問題になることはあまりありません。
また、災害時や急な資金ニーズに対応するための臨時貸付も、合理的と認められる場合は利息不要とされることがあります。ただし、こうしたケースでも、契約書や貸し付けの記録は残しておかなければなりません。
役員貸付金の適正利率はいくらにすべきか

役員に対して貸付を行う際には、前章で述べたように、利息を受け取らなければなりません。その際の利率は、主に以下の2つのどちらかで決めます。
国税庁の定める利率を援用する
1つ目は、国税庁の定める利率を援用する方法です。国税庁のホームページを確認すると、役員または使用人に貸し付けた場合、金利をどの程度にすべきかが詳細に書かれています。たとえば、令和4年から令和7年中に貸付けを行った場合であれば、0.9パーセントの利率とするように定められています。したがって、この利率に従って計算をすれば、基本的に問題ありません。
金融機関の利率を参考にする
2つ目は、金融機関の利率を参考にする方法です。会社が金融機関から融資を受けている場合、それよりも低い利率で役員に対して貸し付けを行うと、利率が不当に安すぎると税務署から指摘を受ける可能性があります。そのため、こうしたケースでは、金融機関の利率を参考に、合理的と思われる利率を設定します。
なお、合理的と思われる利率は、状況によって異なります。もし、金利をどれくらいにすれば良いのか分からない場合は、税理士などの専門家に一度相談してみると良いでしょう。
役員貸付金の利息が問題になるケースとは
役員貸付金は、税務調査において必ずチェックされる重要な項目のひとつです。その際、利息が問題になるのは、主に以下の2つのケースです。
無利息または著しく低い利率で貸し付けている
上述のように、役員に対して貸し付けを行う場合は、基本的に利息を取らなければなりません。ただし、単に受け取れば良いわけではなく、合理的な基準に基づく方法で適正な利率を設定しなければなりません。
そのため、無利子もしくは著しく低い金利で役員に貸し付けていると、税務調査で指摘される恐れがあります。もし、適正な金利との差額が実質的に役員への給与とみなされれば、その分の税金や延滞税などのペナルティを支払わなければなりません。
利息を計上しているが未収金のまま放置している
役員貸付金に対する金利を、帳簿上は利息を計上していても、実際には受け取らずに未収のまま放置している場合は注意が必要です。なぜなら、形式的に利息を計上していても、実際に支払いが行われていなければ、実質的には無利息と同じであると判断される可能性があるからです。
毎年利息を計算して帳簿には計上していても、役員から支払いが行われていなければ、本来受け取るべき利息が役員への経済的利益と判断され、実質的な給与として課税されかねません。そうならないためには、利息を計上するだけでなく、実際に支払いが行われているかを定期的に確認しておきましょう。
税務調査で指摘されないための役員貸付金の管理方法

最後に、税務調査で役員貸付金に関して指摘を受けないためにはどうすべきかについて解説します。
金銭消費貸借契約書を作成しておく
役員貸付金を行う際には、金銭消費貸借契約書を必ず作成しておきましょう。なぜなら、契約書がなければ、貸付なのか役員への報酬や仮払いなのかが不明確になる恐れがあるからです。
また、契約書には、貸付金額、利率、返済期限、返済方法などを必ず明記しておきましょう。そうすれば、会社と役員の間で正式な貸付契約があることを説明しやすくなるため、税務署から指摘を受けるリスクを減らすことができます。
適正な利率を設定する
役員貸付金では、上述のルールを参考に、公正妥当と考えられる利率を設定することが大切です。なぜなら、無利息や著しく低い利率の場合、会社が役員に利益を与えていると指摘されかねないからです。
ただし、どれくらいの金利が公正妥当なのかは、状況によって異なります。金利が高すぎても低すぎても問題が生じる恐れがあるため、一度税理士などの専門家に相談してみると良いでしょう。
利息の支払いと返済を実際に行う
契約書や帳簿上では利息を計上していても、実際の支払いがなければ、形式だけの取引と見られかねません。利息を毎年帳簿に計上していても、役員から会社へ支払われていなければ、実質的には無利息と判断される恐れがあります。
また、役員貸付金に対する元本の返済や利息の支払いは、基本的に銀行振込などを通じて行い、資金の動きが分かる形にしておくようにしておきましょう。そうすれば、役員貸付金の取引実態を説明しやすくなります。
まとめ
役員貸付金は、中小企業では比較的よく見られる取引ですが、利息の扱いには注意が必要です。無利息や著しく低い利率で貸し付けている場合、利息を計上していても実際に回収していない場合には、税務署から指摘を受ける可能性があります。
こうしたリスクを避けるためには、金銭消費貸借契約書を作成し、適正な利率を設定したうえで、利息の支払いと返済を実際に行うようにしましょう。ただし、適正な利息が分からない場合は、税理士などの専門家に相談してから決めることをお勧めします。