起業するためにはある程度の資金が必要ですが、それをすべて自己資金で用意するのは容易ではありません。そこで、融資の申し込みを行うわけですが、その際多くの人が選ぶのが、本記事で紹介する日本政策金融公庫の創業融資です。一般の方には馴染みが薄いかもしれませんが、日本政策金融公庫は中小企業を対象にさまざま融資を行っており、特に創業融資は、創業準備を行う全国の起業家から活用されています。
そこで本記事では、日本政策金融公庫の創業融資の特徴や創業融資に向いている理由などを整理したうえで、融資を成功させるポイントについて解説します。
目次
創業融資といえば日本政策金融公庫です
創業融資の申し込みをどうしようか考える場合、一般的には以下の選択肢が考えられます。
- 銀行などの金融機関
- 日本政策金融公庫
- 地方自治体
- 商工会議所・商工会
そこでまず、それぞれの融資の特徴を簡単にまとめてみます。
銀行などの金融機関
多くの人にとって、「融資を受ける」と考えた場合、都市銀行や地方銀行、信用金庫などの金融機関に申し込むこと真っ先にイメージするのではないでしょうか?
起業を考えている人にとって、銀行などの金融機関とは、創業時はもちろんこれから先もさまざまな場面で融資の相談を行うことになります。こうした金融機関の融資の特徴としては、審査が比較的厳しく、また連帯保証人や担保の供出などを求められるケースが多いことが挙げられます。
日本政策金融公庫
日本政策金融公庫とは、日本政府が出資して設立された政府系金融機関のひとつで、経済発展や国民生活の安定を目的として運営されている特殊法人です。一般の金融機関のように預金業務は行わず、融資業務を専門に行っているため、一般の方の耳に触れる機会は少ないかもしれませんが、全国各地に152の支店を持っています(令和5年10月時点)。
日本政策金融公庫の融資の特徴は、政府によって設立された特殊法人であることから、非営利性が高く、無担保・無保証で金利は低めに設定されているものが多く、比較的審査が通過しやすいことが挙げられます。特に、創業したてでまだ何の実績もない段階でも快く相談に乗ってもらえることから、多くの起業家から活用されています。
地方自治体
地方自治体の中には中小企業を積極的にサポートする融資を行っている自治体もあり、こうした制度が活用できれば、日本政策金融公庫のように比較的低金利での融資が受けられます。
ただし、融資の条件は自治体によってそれぞれ異なるため、起業する場所によっては望む融資が受けられない場合もあります。
商工会議所・商工会
商工会議所や商工会でも、地域の中小企業を対象とする融資が行われています。こちらも一般の金融機関と比べると利子は低めに設定されており、審査も通過しやすい特徴があります。
ただし、融資を受けるには基本的に商工会議所や商工会に入会し、6ヶ月以上の経営指導を受ける必要があります。
一番のオススメは日本政策金融公庫の創業融資
創業融資の選択肢として考えられる4つを比較してみると、やはり第一選択肢としてオススメできるのは日本政策金融公庫です。
日本中どこにでも支店があり、低金利、無担保・無保証で借りることも可能です。もちろん、入会金や出資金などを支払う必要もありません。また、多くの人が創業融資を受けているため、実績も豊富です。このような理由から、創業融資を考えるならば、日本政策金融公庫を選ぶと良いでしょう。
なお、日本政策金融公庫が提供している「新創業支援制度」の詳細は、以下の通りです。
融資限度額 | 3,000万円(うち運転資金1,500万円) |
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返済期間 | 運転資金は7年以内、設備投資は20年以内 |
利率 | 1%~3.5%(令和5年10月2日現在) |
担保・保証人 | 原則不要 |
融資の要件 |
・新たに事業を始める方(または事業開始後税務申告を2期終えていない方) ・創業資金総額の10分の1以上の自己資金が確認できること |
創業融資を成功させる4つのポイント
日本政策金融公庫の創業融資の審査を通過する確率は、おおむね3割程度と言われています。「7割も落ちるのか」とガッカリされるかもしれませんが、まだ何の実績もない相手に対して融資をするわけですから、これでも十分に勝算はあります。
そこで、審査を無事通過し、融資を成功させるために注意すべきポイントを4つ紹介します。
ポイント1.自己資金を用意しておく
上図の融資の要件を確認していただくと、「創業資金総額の10分の1以上の自己資金を確認できること」が挙げられていますが、これは新創業支援制度に申し込むための最低条件に過ぎません。少し前までは2分の1以上の自己資金が要件であったことから考えると、100万円の自己資金が用意してあるからといって、1,000万円が融資してもらえるわけではありません
実際のケースを確認してみると、自己資金の3~4倍程度が融資額の上限となる場合が多いため、ある程度以上の融資を望まれる方は、その分だけ自己資金も多めに用意しておいた方が良いでしょう。
ポイント2.事業計画書を作り込む
融資を申し込む際には、事業計画書を提出しなければなりません。様式をご覧いただけばお分かりのように、かなり細かく書き込まなければならないうえに、適当に書くと各所の数字に矛盾が生じるため、こうした書類を書きなれている人以外にはかなりハードルが高いと言えます。
また、経営者の略歴や過去の事業経験は返済能力を判断する上で重要視されるポイントとなるため、できるだけ詳細に書き込んでアピールすることが大切です。
なお、実際の計画書は、日本政策金融公庫のホームページのこちらからダウンロードできます。
ポイント3.売上予測の根拠を強くする
融資の審査を受ける際に、担当者は創業者に数字を読む能力があるかどうかを見ています。売上の見通しの根拠が甘かったり、盛り過ぎて現実味のない数字であったりでは、マイナス評価をされかねません。したがって、「どのような根拠でこうした売り上げの見通しが立つのか」を論理的に組み立て、明確にしておいた方が良いでしょう。
ポイント4.面談の準備を入念にする
創業計画書は専門家に作成を依頼することもできますが、審査の面談は本人が受けなければなりません。プロが作った隙のない立派な創業計画書であったとしても、面談で本人が何も説明できなければ、まったく評価されません。したがって、当日の面談をイメージして、どのような角度から質問されても答えられるように準備しておきましょう。
日本政策金融公庫以外でオススメの融資
日本政策金融公庫以外の融資でオススメなのが制度融資です。制度融資とは、「自治体」と「金融機関」と「信用保証協会」の3者が連携して行う融資のことです。
自治体と金融機関が連携し、信用保証協会の保証を得て融資が実行されます。保証を得るためには対価として保証料を支払いますが、多くの自治体では借入金利息や保証料の一部を負担してくれるため、実際の負担はかなり低く抑えられます。
なお、具体的な条件については自治体ごとに異なるため、詳しくは各自治体のホームページなどでご確認ください。
創業融資は専門家に依頼しよう
創業融資の審査を通過するためには、事前の準備が欠かせません。その中でも特に重要なのが、事業計画書の作成です。しかし、書類の作成に不慣れな創業者にとって、3割前後の確率の審査を通過するのは簡単な事ではありません。
とは言え、論理的に矛盾のない説得力のある事業計画書を作成しなければ、望む金額での融資は難しいでしょう。そこで活用するのが、専門家です。創業融資に強い専門家であれば、過去に何十・何百もの事業計画書に目を通しています。
どうすれば審査に通過し、どうなれば失敗するのかを熟知しているだけに、スタートダッシュでつまずかないためにも、創業融資は専門家に依頼した方が良いでしょう。
まとめ
創業資金の調達方法にはいろいろありますが、一番のオススメは日本政策金融公庫の創業融資です。低金利なうえに無担保・無保証で、融資の限度額は高く、返済期間も長めに設定できます。
ただし、他の融資と比べると用意すべき書類の量が多く、特に事業計画書の作成はかなり緻密に行わなければなりません。そのため、こうした書類の作成が不安な方や、審査に通過する確率を少しでも上げたい方は、創業融資の実績豊富なスターズラボ会計事務所へご相談ください。