起業したばかりの方の中には、消費税はいつから払うのかと疑問に感じる方も多いのではないでしょうか。支払い開始時期の判断は、単純に開業してからの年数ではありません。売上の状況や一定のルールによって、免税か課税かは決まります。そこで本記事では、消費税が課税される時期について、基本からやさしく解説します。
目次
消費税はいつから払う?「免税」と「課税」の基本を整理
事業を始めたばかりの方にとって、まず押さえておきたいのは「免税事業者」と「課税事業者」の違いです。 はじめに、消費税の基本的な仕組みから整理してみましょう。
免税事業者と課税事業者の違い
消費税は、すべての事業者が必ず納めるわけではありません。事業者の規模や売上によって、以下の2種類に分かれます。
- 免税事業者・・・一定の条件を満たすと、消費税の納税義務が免除されます。免税事業者であれば、売上に消費税を上乗せして顧客から受け取っても、その分を国に納める必要はありません。また、申告手続きも不要なので、事務負担が少なく、起業直後の資金繰りにも余裕が出やすくなります。
- 課税事業者・・・消費税の納税義務がある事業者です。原則として、売上で預かった消費税から、仕入れや経費で支払った消費税を差し引いた差額を、税務署に申告・納付します。そのため、手続きが複雑になり、納税額によっては資金繰りに影響が出る場合もあります。
このように、免税事業者か課税事業者かによって、消費税の扱い方や手続きの負担、資金繰りなどが大きく変わります。どちらに該当するかは、後述する判定ルールで決まりますが、まずはこの基本的な違いをしっかり理解しておきましょう。
「2年前の売上」で決まる?課税事業者になる判定ルール

消費税が課税されるかどうかは、開業してからの年数ではなく、売上を基準に判断されます。ここでは、その具体的な判定ルールを確認していきましょう。
1.基準期間と売上1,000万円ルール
消費税の納税義務は、原則として、基準期間と呼ばれる前々年の売上によって判定されます。この期間の課税売上高が1,000万円を超えている場合、その2年後に課税事業者となります。
たとえば、2024年の売上が1,000万円を超えていれば、2026年から消費税の納税義務が発生するという流れです。このように、実際に売上が伸びたタイミングと納税義務が発生する時期にはズレがあるため、事前に把握しておくことが重要です。
2.特定期間による判定
基準期間の課税売上高が1,000万円以下でも、事業が急成長した場合、消費税の課税事業者になることがあります。その際の判定基準が、特定期間の課税売上高もしくは給与等の支払額です。
特定期間とは、以下の期間を指します。
- 個人事業者の場合・・・その年の前年1月1日から6月30日までの6ヶ月間。
- 法人の場合・・・原則として、その事業年度の前事業年度開始の日以後6ヶ月の期間。
特定期間で課税事業者になるかどうかは、以下のいずれかで判定します(事業者が任意で選択)。
- 課税売上高が1,000万円を超える場合 → 課税事業者。
- 給与等の支払額(特定期間中に実際に支払った給与・賞与等の合計額)が1,000万円を超える場合 → 課税事業者。
- 適格請求書発行事業者となるため
- 高額な設備投資などを行うため
したがって、課税売上高と給与等の支払額の両方が1,000万円を超えている場合には、どちらの基準を選んでも課税事業者となります。一方、どちらか一方だけが1,000万円以下であれば、その基準を選ぶことで免税事業者のままにできる可能性があります。
起業1年目~3年目までの消費税の流れ
消費税の課税タイミングは、年ごとの流れで理解すると整理しやすくなります。ここでは起業1年目から3年目までの一般的な流れを確認していきましょう。

起業1年目
起業1年目は、基準期間となる前々年の売上も、前年の特定期間も存在しません。そのため、原則として免税事業者となり、消費税の納税義務は発生しません。免税事業者であれば、消費税を納付する必要がないため、手元資金に余裕を持たせやすくなります。事業の立ち上げ期は何かと資金が必要になるだけに、この点は大きなメリットといえるでしょう。
ただし、設立時の資本金が1,000万円以上の場合は、基準期間や特定期間の判定基準に関係なく、起業1年目から課税事業者となります。したがって、決算時には消費税を申告・納税しなければなりません。
起業2年目
2年目になると、基準期間は存在しないものの、特定期間は発生するため、特定期間における判定基準に基づいて免税か課税かを判断します。前述のように、起業1年目の前半6ヶ月間において、課税売上高または給与等の支払額のいずれかが1,000万円を超えた場合には、事業者が選ぶ判定基準によっては2年目から課税事業者となるため、消費税を支払わなければなりません。
多くの場合、消費税の課税事業者になるのは3年目以降ですが、こうした例外もあるため、状況に合わせて正しく判断するように心がけておきましょう。
起業3年目
3年目になると、1年目の売上が基準期間として判定に用いられます。1年目の課税売上高が1,000万円を超えている場合には、この3年目から課税事業者となり、消費税の申告と納付が必要になります。2年目の特定期間において、特定期間の基準(課税売上高または給与等支払額のいずれか)が超えている場合にも、同様に3年目から課税事業者となります。
このように、3年目以降の判定には、複数の基準を考慮しなければならないため、十分に注意しなければなりません。
あえて課税事業者を選ぶべきケースと注意点
消費税は、基準期間の課税売上高などにより自動的に課税されるのを待つだけでなく、自らの意思で積極的に課税事業者になることもできます。ここでは、あえて課税事業者を選ぶ必要があるケースと、その注意点を解説します。

課税事業者をあえて選択する主なケース
免税事業者であるメリットを捨てて、あえて課税事業者となる主な理由は、以下の2点です。
適格請求書発行事業者とは、インボイス制度に基づき、税務署に登録して適格請求書(インボイス)を発行できる事業者のことです。事業者は、本来免税事業者であっても、届出書を提出することにより課税事業者としてインボイスを発行することができます。
このように、課税事業者になる目的は、取引先との取引を継続的に行う(もしくは増やす)ことです。取引先の立場で見ると、課税事業者からインボイスを受け取れば、仕入れにかかった消費税を差し引くことができます。
一方で、免税事業者との取引では、この控除ができません。したがって、事業者に支払った消費税分だけ実質的な負担が増えてしまいます。そうなると、取引先としては、課税事業者との取引をできるだけ優先しようとするでしょう。こうした理由から、免税事業者としてのメリットよりも取引の継続・拡大を優先し、あえて課税事業者となる場合があります。
もう一つは、高額な設備投資を行う場合です。消費税は、原則として、売上等で預かった消費税から、仕入等で支払った消費税を差し引いて、その分を納税します。しかし、高額な設備投資を行い、支払う消費税の方が多ければ、差額分の還付が受けられます。こうしたケースでは、あえて課税事業者が選択することがあります。
選択する注意点
課税事業者を選択すると、日常の経理・記帳業務が複雑化します。また、決算期には消費税の申告書も作成しなければなりません。さらに、免税事業者であれば納める必要のなかった消費税を納めることになるため、資金繰りが悪化し、事業計画に影響が及ぶ恐れがあります。
一度課税事業者を選択すると、最低2年間は免税事業者に戻れないだけに、短期的なメリットだけで判断するのではなく、取引先との関係や今後の事業計画も踏まえた上で慎重に検討しなければなりません。
まとめ
消費税がいつから課税されるかは、単に開業してからの年数では判断できません。基本的には前々年の売上によって決まりますが、前年の前半6ヶ月間の売上や給与の状況によっては、課税事業者となる場合もあります。
また、インボイス制度の影響などにより、あえて課税事業者を選択するケースもあります。そのため、自社の状況や今後の事業計画などを踏まえた上で、適切に対応することが大切です。判断に迷う場合は、早めに税理士などの専門家へ相談すれば、状況に応じた適切な対応を取りやすくなるでしょう。