毎年多くの人が起業しますが、そのうちの何割かは、個人・法人を問わず税理士と顧問契約を結んでいます。反対に、起業してからもう随分経つのに、税理士と顧問契約を結んでいない事業者も数多く存在します。
では、これから起業する場合、税理士と顧問契約を結んだ方が良いのでしょうか?それとも必要ないのでしょうか?あるいは、起業したばかりであれば税理士は要らないけれど、会社がある程度大きくなったら税理士が要るようになるのでしょうか?
そもそも、起業する前から税理士と接点がある人はほとんどいません。ですから、税理士がどのような業務をしており、何ができて、顧問契約を結ぶとどのようなメリットがあるのかを正しく理解している人もそれ程多くないでしょう。
そこで本記事では、顧問税理士を持つメリットとデメリットを整理したうえで、起業したら税理士が必要かどうかを考えてみます。
目次
顧問税理士がしてくれる4つのコト
はじめに、税理士と顧問契約を結ぶと何がしてもらえるのかを整理してみます。顧問税理士がいるとしてもらえるのは、おもに以下の4つです
1.会計業務
起業すると、日々のお金の出入りを帳簿に記帳しなければなりません。しかし、一人社長で多忙な場合や記帳そのものが苦手な場合などには、こうした会計業務を顧問税理士に依頼することができます。もちろん経営者自身で行う事もできますが、その場合は別途会計ソフトを購入し、毎年の更新料などを支払わなければなりません。
2.税務相談
顧問税理士がいると、気軽にいつでも税務相談に乗ってもらうことができます。起業して業務が順調に拡大していくとそれなりの税金を納めることになりますが、事業規模や事業内容によって節税プランは異なります。そのため、その時々に最適化された節税法を選択しなければなりません。
顧問税理士にはこうしたタックスプランニングの相談にも乗ってもらえるため、税理士に支払う顧問料の大部分が節税額で回収できてしまう場合もあります。また、節税だけでなく納税が難しい場合などにも、納税方法に関して相談に乗ってもらうことができます。
3.経営コンサルティング
税理士はさまざまな業種や事業規模の顧客を抱えているため、どうすれば成功し、どうすれば失敗するのかをよく知っています。ビジネスの世界で絶対に成功する方法はありませんが、こうするとほぼ間違いなく失敗するパターンはいくつかあります。
そのため、税理士に経営に関する悩みなどを相談すれば、最悪の事態を避けるための施策が教えてもらえます。それ以外にも、税理士によっては、優良な得意先などを紹介してくれる場合もあります。
4.税務代理
税務代理とは、納税者に代わって税務申告を行う事です。法律上この業務が認められているのは、税理士だけです。顧問税理士がいれば税務代理をお願いできるため、経営者に代わって必要な書類を作成し、税務申告をしてもらうことができます。もちろん税務署からの問い合わせや税務調査などの対応も、すべて任せることができます。
顧問税理士のメリット・デメリット
税理士と顧問契約を結ぶ場合のメリットとデメリットについて解説します。まずはメリットからです。
顧問税理士のメリット
顧問税理士がいる最大のメリットは、会計や税務に関する業務をすべて依頼できる点です。正しい会計処理をするためには簿記の知識が、そして正しい税務申告を行うためには所得税法や法人税法などの知識が必要ですが、小さい会社がこうした人材を確保するのは容易ではありません。
しかし、顧問税理士がいれば、事務員を雇うより安い費用でこうした業務の一切を依頼することができます。
また、企業経営には金融機関からの資金調達が欠かせませんが、そのためには事業計画書を作成する必要があります。事業計画書の作り込みが甘ければ融資を断られてしまうだけに作成には細心の注意が必要ですが、こうした書類の作成も、顧問税理士に相談しながら進めて行くことができます。
顧問税理士のデメリット
顧問税理士のデメリットは、毎月の顧問料が発生する点です。専門性の高い業務を依頼することになるため、どうしてもある程度の費用は必要になります。
ただし、「顧問税理士は欲しいが高額な顧問料の支払いは難しい」という方の場合は、依頼する業務内容を絞り込むことである程度費用を抑えられる場合もあります。
起業直後から税理士は必要?不要?
起業直後から税理士が必要かどうかは、個人事業主の場合と法人の場合とで大きく異なります。
個人事業主の場合
個人事業主として起業した場合であれば、必ずしも起業直後から税理士が必要であるわけではありません。経営者自身で記帳や確定申告のやり方などを勉強しなければなりませんが、仕事がそれ程忙しくないうちであれば、それも十分に可能です。
ただし顧問税理士がいなければ、事業を拡大して売り上げを伸ばしたり、法人化したりするまでに時間がかかる可能性があります。顧問税理士がいれば融資のための資料作成や相談ができるため、比較的早い段階から資金調達が可能です。また、経営者が経理業務を行う必要がないため、事業だけに専念できます。
こうした理由により、個人事業主であれば起業直後から税理士と顧問契約を結ぶ必要は必ずしもないものの、その分だけビジネスの展開や資金繰りの安定などに問題が生じる恐れがあります。
法人の場合
起業して法人を設立した場合は、起業直後から顧問税理士が必要です。経営者本人が税理士であるか、もしくは税理士法人などに勤務経験があるような特殊な場合を除けば、ほぼ間違いなく顧問税理士は必要となります。
まず、法人の税務申告を行うためには法人税の知識が必要不可欠ですが、これを一般の経営者が身に着けることは残念ながらほぼ不可能です。加えて、税法は毎年のように変わるため、経営者や一般の事務員がこうした情報にキャッチアップし続けようとするのはあまり現実的ではありません。
また、税務申告を行うためには専門のソフトが必要となりますが、これも高額な上に毎年更新料が必要です。
このような理由により、起業して法人を設立した場合は税理士と顧問契約を結び、その上でさまざまな依頼や相談をしてみることをお勧めします。節税の相談はもちろんのこと、会社の経営や資金繰り、補助金や助成金などの申請についても税理士なら相談に乗ってもらえます。
また、多くの税理士は他の士業ともそれなりのコネクションを持っているため、弁護士や司法書士、社会保険労務士などに相談があるような時には紹介してもらうこともできます。
まとめ
起業したら税理士と顧問契約を結ぶ事業者も多いだけに、顧問税理士が必要かどうかで悩む方も多いのではないでしょうか?本記事でも紹介したように、個人事業主であれば、とりあえず顧問税理士がいなくても何とかご経営者自身の努力と勉強で確定申告を済ますことは可能です。ですから、資金に余裕のない方は、まずご自身で何とかしてみることをお勧めします。
ただし、少しでも早く事業を軌道に乗せたい方であれば、個人・法人を問わず、起業当初から税理士と顧問契約を結んでおくことをお勧めします。事業を拡大していくためには、仕事以外にもさまざまな知識が必要ですが、その多くを税理士(もしくは提携している他の士業)が持っています。
何かあれば取り敢えず税理士に相談し、彼らを上手に活用することができれば、顧問料以上のリターンを簡単に引き出すことができるでしょう。