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会計が苦手な経営者でもわかる税務会計と財務会計の違い

会計が苦手な経営者でもわかる税務会計と財務会計の違い

経営者は、自社の経営状態を常に把握しておかなければなりません。したがって会計に強くなければ、経営者として正しい判断を下すことはできません。ですが、「実は会計は苦手」という経営者は珍しくありません。なぜなら、「会計」と言っても、実はいくつもの種類があり、混同されやすいからです。そこで本記事では、会計が苦手な経営者に向けて、会計の役割と種類についてできるだけ分かりやすく解説していきます。

そもそも、会計って何?

「会計」という言葉をテレビや新聞などで目や耳にする機会も多いと思いますが、そもそも会計とは何を指す言葉なのでしょうか?

会計とは

会計とは、簡単に言うと、会社における毎日の取引を記録・管理することです。誰でも一度はつけたことのある「お小遣い帳」の会社版だと思っていただければ、イメージしやすいと思います。

ただし、会計がお小遣い帳と根本的に違う点があります。お小遣い帳は自分以外の人間に見せることを前提に作られていないのに対し、会計は経営者以外にも報告することを目的に行われるためです。

会計とは

会計の目的

会計には、大きく分けると以下の3つの目的があります。

  • 会社の取引をまとめ、税金を計算する
  • 会社の取引をまとめ、その情報を外部に公開する
  • 会社の取引をまとめ、社内での管理に生かす

一つ目の、税金の計算を目的として行われる会計を「税務会計」と言います。それに対して、二つ目の公開を目的として行われる会計を「財務会計」と言います。

ちなみに本記事では扱いませんが、三つ目の社内管理用に行われる会計を「管理会計」と言います。これは、規模がある程度以上大きな会社などで使われています。

目的が違うと何が起こる?

では、会計の目的が違うと何が起こるのでしょうか?実は、会計の目的が違うと、最終的に作成される貸借対照表や損益計算書などの財務書類の数字(金額)が違ってしまうのです。

ですから、「税務会計で作った財務書類の当期利益は〇〇万円だけど、財務会計で作った財務書類の当期利益は△△万円だよ」ということが普通に起きてしまうのです。同じ会社の財務書類を作っても、それが税務会計なのか財務会計なのかによって最終結果が違ってくるわけですね。

これでは、会計が苦手な経営者でなくても混乱してしまうのは当然です。では、どうしてそうなってしまうのでしょうか?

税務会計と財務会計の違い

税務会計と財務会計では、上述のように目的が違います。それを、もう少し詳しく見てみましょう。

企業の会計の違い

税務会計の目的

税務会計の目的とは、会社が支払うべき税金の金額を正しく計算することです。会社側としてはできるだけ利益を小さく見せて税金の金額を少なくなるようにしたいところですが、それでは公平公正な税額が算出できません。

そこで税務会計では、利益を過少に見せないように、税法に則った処理を行うように定められています。法人なら法人税法に、個人なら所得税法に則った会計処理を行わなければならないため、たとえば支払義務が確定していない費用などは計上できません。

財務会計の目的

財務会計の目的とは、会社の利益を算定して株主や投資家、金融機関などに報告することにあります。会社側としてはできるだけ利益を大きく見せ、投資や融資に有利になるようにしたいところですが、それでは投資家や金融機関が正しい判断を下せません。

そこで財務会計では、不当に利益を過大に見せないように、企業会計原則に則った処理を行うように定められています。企業会計原則とは、企業会計の実務で慣習として発達した中かから一般に公正妥当と認められる基準を要約したもので、法的な拘束力はないものの、会社の規模を問わず守るべき原則とされています。

そのため税務会計とは違い、将来的に生じる(が今は確定していない)費用であっても、認識されるのであれば正しく計上しなければなりません。

税務会計と財務会計の違いで生じるズレ

では、税務会計と財務会計の目的の違いによって、具体的にどのようなズレが生じるのでしょうか?たとえば、将来の発生に備えて特定の費用や損失を見積もり、それを積み立てて行くものとして「引当金」があります。賞与引当金や退職給与引当金、貸倒引当金などがそうです。

税務会計では例外的に貸倒引当金だけは計上が認められていますが、それ以外の引当金はすべて認められていません。これに対し財務会計では、すべての引当金を適正に見積もり、それを計上しなければなりません。

また、税務会計では計上できる交際費や寄付金の金額に制限が設けられていますが、財務会計では全額を費用として計上します。

これ以外にも、税務会計と財務会計とではさまざまな点で「費用として計上できる・できない」の基準が違うため、最終的に作成される貸借対照表や損益計算書などの金額も違ってくるわけです。

中小企業は税務会計になりがち

中小企業の多くは、財務会計でなく税務会計によって会計処理を行っています。なぜなら、申告期限内に正しい納税額を計算して納税を済ませなければ、税務署からペナルティーを受けてしまうからです。

ですが、上述のように税務会計は税金の金額を計算するための会計であり、会社の財務状況を必ずしも正しく反映しているわけではありません。そのため、理想的には、財務会計で作成した貸借対照表や損益計算書をベースに税務申告書を作成するのが望ましいと言えるでしょう。

法人と個人事業主で異なる会計

税務会計と財務会計の違いは前章で述べた通りですが、同じ税務会計でも、法人と個人事業主では違います。なぜなら、法人は法人税のルールに準拠した税務会計であるのに対し、個人事業主は所得税のルールに準拠したものだからです。

法人と個人事業主に関する会計上の相違点はいくつもありますが、その中でも特に違うのが減価償却に関する扱いです。

減価償却

法人と個人事業主の減価償却の違い

減価償却とは、長期間に渡って使用する資産のうち一定以上の金額のものについては、資産ごとに定められた年数で1年ずつに分割して経費計上する経理処理の方法のことです。

個人事業主の場合は、この減価償却を毎年定められた通りに必ず行わなければなりません。これに対し法人の減価償却は任意であるため、減価償却をしてもしなくても、どちらでもOKです。また、個人事業主は減価償却を定められた金額通り全額計上しなければなりませんが、法人の場合は定められた金額の範囲内であれば、任意の金額で償却費を計上できます。

さらに、減価償却資産の償却方法についても、個人事業主は原則として定額法であるのに対し、法人の場合は、建物、建物附属設備、構築物、ソフトウェア以外の減価償却資産は原則として定率法で償却します。

なお、こうした減価償却の違い以外にも、個人事業主が自分に対する給料や生命保険が費用として認められないのに対し、法人の場合は経費として認められる幅が広く自分への給料や退職金なども経費として計上できるなどの違いがあります。

まとめ

会計はその目的に応じて分類されているため、ご自身の目的に応じたものを選択しなければなりません。たとえば、決算で税額を算出するのであれば税務会計を選択した方が良いですが、経営分析などを行うのであれば財務会計を選んだ方が良いでしょう。

なお、どちらを選んだ方が良いか分からない方は、税理士などの専門家に相談することをお勧めします。

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