
社会や価値観の変化にともない、お金を出して好きなものを買う時代から、お金を出して好きなものを利用する時代へ移りつつあります。家も車も洋服もCDもすべて「所有」することが当たり前だった時代は終わり、「あえてすべてを所有する必要はないかな」という時代がすでに始まっています。
これと同様のことがビジネスの世界でも起きており、かつての「フロー型ビジネス」とは違う「ストック型ビジネス」が近年の主流になりつつあります。そこで本記事では、ストック型ビジネスの定義とその種類、メリットやデメリットを解説したうえで、フロー型ビジネスとの違いや成功事例を紹介します。
目次
ストック型ビジネスとは
はじめに、どのようなものをストック型ビジネスと言うのかその定義から簡単に解説します。
ストック型ビジネスの定義
ストック型ビジネスとは、継続的に収益が上げられるサービスやインフラを構築し、定額もしくは従量制で提供するビジネスモデルのことです。その代表がサブスクリプションで、毎月定額を支払うことでソフトウェアの使用や動画配信サービスなどが受けられます。

ストック型ビジネスの具体例
ストック型ビジネスにはさまざまな種類があります。その中でも特に有名なのが、以下の9種類です。
- 定期購入型・・・新聞やウォーターサーバーなど
- 配信型・・・音楽や動画の配信サービスなど
- 点検型・・・エレベーターの定期点検や建物の保守点検など
- レンタル型・・・絵画や洋服のレンタルサービスなど
- 教室型・・・スポーツジムやEラーニングなど
- 会員制型・・・リゾートホテルやBarなど
- ファンクラブ型・・・芸能人やミュージシャンのファンクラブなど
- 賃貸型・・・賃貸アパートや賃貸オフィスなど
- インフラ型・・・電話回線やインターネット回線など
フロー型ビジネスとの違い
ストック型ビジネスと比較される機会が多いのが、フロー型ビジネスです。フロー型ビジネスとは、従来からある「買い取り型」のビジネスモデルの事で、小売店や飲食店をはじめ多くの業種ではフロー型ビジネスによるサービスが展開されています。
消費者が必要な時にしか購入してもらえない点はストック型ビジネスにかないませんが、その分フロー型ビジネスの場合は利益率が高く、1度の取引で高額な売り上げが上がることも珍しくありません。たとえば、賃貸マンションやカーリース(サブスク型)であれば毎月定額の売上が上がりますが、家や車が売れれば、その何百倍もの売上げが計上できる点などがその一例です。
また、フロー型はストック型とは違い定期的に購入してもらいにくいため、常に新規顧客を獲得するための営業や広告宣伝をしなければなりません。こうした点も両者は大きく違います。
ストック型ビジネスのメリット・デメリット

ストック型ビジネスにはさまざまなメリットがある反面、注意すべきデメリットもあります。それぞれを詳しく見てみましょう。
ストック型ビジネスのメリット
ストック型ビジネスのメリットは、おもに以下の3点です。
継続的に安定した収益が見込める
ストック型ビジネスは売上を伸ばすのが難しい反面、いったん顧客となってもらえれば継続して購入してもらえます。そのため、売上が急激に減ることはありません。そのため、長期的な経営計画が立てやすく、リスクコントロールもしやすいビジネスモデルであると言えます。
営業活動にそれ程のリソースを投入しなくても良い
ストック型ビジネスでは、一度購入もしくは契約してもらえば、特別な営業などを行わなくても収益が持続する特徴があります。営業活動にリソースを割かなくても収益が安定しているため、次の展開に向けた新商品の開発などに社内のリソースが割けます。
収益が外的要因にそれ程影響されない
売り切り型のフロー型ビジネスは、リーマンショックや新型コロナウイルスのような外的要因に大きな影響を受けてしまいます。そのため、何かが起こると常に収益が不安定になります。しかし、ストック型ビジネスであれば収益が外的要因に影響されにくいため、経営を常に(ある程度)安定させることが可能です。
ストック型ビジネスのデメリット
ストック型ビジネスのデメリットは、おもに以下の2つです。
収益が安定するまでに時間がかかる
ストック型ビジネスの最大のデメリットは、顧客を獲得して収益が安定するまでに時間がかかる点です。弁護士や税理士などの士業がその典型で、いったん顧問先を獲得してしまえば収益は安定しますが、社会的ニーズと比べ競争が激しいため、これは簡単な事ではありません。
また、開業後何年かは赤字が続くことも珍しくありません。こうした事態を避けるためには、開業までにある程度の資金を用意し、広告宣伝費や運転資金などにコストをかけ続けられる財務体制を構築しておくと良いでしょう。
収益を爆発的に伸ばせない
フロー型ビジネスであれば、ヒット商品さえ生み出せば、これまでの何十倍もの収益を一気に稼ぎ出すことも夢ではありません。フロー型ビジネスはハイリスクである分、大きなリターンも期待できるのです。
しかし、ストック型ビジネスの多くは、「前年度の〇〇倍」のように収益を爆発的に伸ばすことはできません。収益が上がる時も落ちる時もゆっくりであるだけに、「一発逆転」を望むのは難しいでしょう。
ストック型ビジネスの成功事例

最後に、ストック型ビジネスの成功事例を紹介します。
Netflix
月会費さえ払えば、TV番組や映画、バラエティーからドキュメンタリーまで何でも見られる動画のストリーミングサービスです。こうした動画配信サービスが登場する以前は、DVDをレンタルするしかありませんでした。
しかし今では、わざわざレンタルショップに行かなくても、TVやパソコン、タブレットやスマートフォンなどさまざまな端末で好きな映画が好きなだけ見られるようになりました。
エアークローゼット
洋服のサブスクを展開しているのが、エアークローゼットです。洋服はお店で買うのが当たり前だった時代からは考えられないビジネスモデルですが、順調に売り上げを伸ばしグロース市場に上場しています。
プロのスタイリストがコーディネートした洋服が借り放題で、30万着の中から好きなものが試せるため、大きなクローゼットを持たない世代に人気です。また、コンビニで気軽に洋服の受け取り・返却ができるため、「必要な時だけ利用したい」「できるだけお金をかけずに流行の洋服を着てみたい」というニーズを見事に汲み上げることに成功しました。
チョコザップ
24時間365日使い放題のジムを、極めて安価な月会費で提供しています。完全無人の店舗に数の限られた運動器具などを設置するだけなので、企業側から見れば初期投資にそれ程お金がかからず、ユーザー側からすれば安価で利用できます。
ライザップのようにトレーナーによる徹底した指導が行われない分、安価で使い放題なため、またたく間に店舗数を増やすことに成功しました。
まとめ
ストック型ビジネスは一度顧客を掴んでしまえば収益が安定させられるため、世界中の多くの企業でこれを活用したサービスが提供されています。フロー型ビジネスと比べると黒字化するまでに時間はかかりますが、ストック型ビジネスと並行して行ったり、創業時に融資を受けてある程度の資金さえ用意できたりすれば、決して難しいことではありません。
なお、ストック型ビジネスにどう取り組めば良いか分からない方は、こうしたビジネスモデルの構築や展開などに詳しい専門家に相談し、アドバイスを受けてみると良いでしょう。