事業が順調に進み、従業員の福利厚生を充実させたいと考えているなら、iDeCo+(イデコプラス)という制度を検討してみてはいかがでしょうか。iDeCo+は、従業員の老後資金をサポートするための制度で、中小企業にも大きなメリットがあります。
ただし、制度の内容をしっかり理解していないと、その良さを十分に活かすことができないかもしれません。そこで本記事では、iDeCo+の基本的な仕組み、導入することで得られるメリットや注意点、そして企業型DCとの違いについて、わかりやすく解説していきます。
iDeCo+とは
iDeCo+とは、正式には「中小事業主掛金納付制度」といい、2018年5月に始まった制度のことです。これは、従業員が個人で加入する「iDeCo(個人型確定拠出年金)」に対して、企業が掛金を上乗せして支払える仕組みとなっています。
対象となるのは、従業員が300人以下で企業年金を持たない中小企業です。企業が支払う掛金は、全額が法人税の損金に算入できるため、節税効果も期待できます。そのため、iDeCo+は、従業員の老後の資金づくりをサポートしながら、企業にとっても従業員の定着や優秀な人材の確保に役立つ制度と言えるでしょう。
iDeCo+の導入を検討する際には、まず自社が制度の対象となるか確認することが重要です。特に、企業年金制度を既に導入している企業や従業員数が300人を超える企業は、iDeCo+の対象外となります。また、iDeCo+を導入する場合、事前に従業員の理解を得ることが大切です。従業員にとっては、自分の将来の資金形成に直接関わるため、その仕組みやメリットをしっかりと説明する必要があります。
iDeCo+導入のメリットと注意点
iDeCo+を導入することで、企業にも多くのメリットがありますが、いくつか気をつけるべき点もあります。制度を取り入れる際には、従業員にとってのメリットだけでなく、企業としての負担や手続きの簡単さも考慮することが大切です。ここでは、企業側と従業員側それぞれのメリット、そして導入時の注意点について、詳しく見ていきましょう。
事業主のメリット
iDeCo+を導入すると、企業にはいくつかのメリットが得られます。まず、福利厚生が充実するため、従業員が安心して働けるようになります。従業員が自分の老後に向けてしっかりと十分な資金が準備できるようになると、仕事への意欲が高まり、企業に長く勤めてもらいやすくなります。その結果、優秀な人材の確保や離職率の低下が期待できます。
また、企業が支払う掛金は全額が法人税の損金に算入できるため、節税効果が得られます。さらに、iDeCo+を導入するにあたり、企業自体は金融機関と直接契約を結ぶ必要がないため、手続きも比較的簡単に進められます。
さらに、iDeCo+の導入は企業のイメージ向上にもつながります。福利厚生が充実している企業は、求職者からの注目度が高くなるため、採用活動においても有利に働くことが多くなります。また、従業員を大切にする姿勢を示すことで、企業全体の信頼性が高まり、取引先や顧客からの評価も向上する可能性があります。
従業員のメリット
従業員にとっても、iDeCo+には多くのメリットがあります。企業が上乗せして掛金を支払ってくれるため、自分の老後資金を効率的に増やせます。さらに、iDeCoと同様に、掛金やその運用益には税制上の優遇があり、節税にもつながります。運用がうまくいけば、将来受け取る年金額が増えることも期待できます。
また、企業が支払う掛金は従業員の給料には含まれないため、税金や社会保険料が増える心配もありません。これにより、手取りが減らないまま、老後資金を積み立てることができます。
iDeCo+に加入することで、従業員が早いうちから資産形成を始めるきっかけにもなります。若い世代にとって、老後の資金について考えることは難しいかもしれませんが、iDeCo+を通じて定期的に資産を積み立てることで、将来の不安を軽減することができます。さらに、定期的な積立が習慣化することで、個人の資産運用に対する意識が高まるため、経済的な安定を手に入れる手助けとなるでしょう。
導入時の注意点
iDeCo+を導入する際には、注意すべき点もいくつかあります。まず、iDeCoに加入している従業員だけが対象となるため、全従業員に一律に適用できるわけではありません。また、導入には労使合意が必要であり、そのための手続きや社内規程の整備が求められます。
さらに、掛金の設定には最低額や上限額があり、企業が支払う掛金と従業員が支払う掛金の合計が月5,000円以上である必要があります。制度の運用には給与からの天引きや事務処理が必要になるため、企業側の負担が増えることも頭に入れておいた方が良いでしょう。
また、iDeCo+の導入を検討する際には、事前にしっかりとした計画を立てることが重要です。特に、社内の事務処理や労使間の合意に関する課題をクリアにしておくことが求められます。従業員に対しても、制度のメリットや注意点を丁寧に説明し、全員が納得した上で導入を進めることが成功の鍵となります。
iDeCo+と企業型DCの違い
iDeCo+と企業型DCは、どちらも従業員の老後資金づくりをサポートする制度ですが、それぞれに違いがあります。企業がどちらの制度を導入するかを決める際には、それぞれの特徴をしっかり理解し、自社の規模や従業員のニーズに合った制度を選ぶことが大切です。ここでは、iDeCo+と企業型DCの違いを、主なポイントに分けて解説します。
制度の概要と加入対象者
iDeCo+と企業型DCの一番の違いは、対象となる企業規模や加入対象者です。iDeCo+は、中小企業向けの制度で、従業員数が300人以下の企業が対象となります。一方、企業型DCは企業規模に関係なく、多くの企業で導入可能です。また、iDeCo+は、iDeCoに加入している従業員だけが対象ですが、企業型DCは、その企業に雇用されている全ての厚生年金被保険者が対象です。
企業型DCは、大企業をはじめとした広範な企業で導入されており、企業が従業員のために毎月の掛金を全額負担する仕組みです。企業型DCは、従業員が長期間にわたって安定した年金を受け取れるよう、企業が主体となって運用を行うため、従業員の将来に対する安心感が高まります。
掛金の拠出方法
iDeCo+では、企業と従業員がそれぞれ掛金を支払いますが、企業型DCでは、企業が全額を拠出するのが一般的です。iDeCo+の場合、企業と従業員が掛金を出し合い、その合計額をiDeCoの掛金枠内で運用します。一方、企業型DCでは、企業が決めた掛金額を従業員の給与に基づいて設定し、企業が全額を拠出します。
企業型DCでは、掛金の設計が柔軟であり、従業員の年齢や役職に応じて異なる掛金額を設定することが可能です。また、従業員が追加で自己負担をする「マッチング拠出」も認められており、個々のニーズに応じた資産形成ができる点が魅力です。
税制上の取り扱い
どちらの制度も税制上のメリットがありますが、細かい点で違いがあります。iDeCo+では、企業が支払う掛金は全額が損金算入され、従業員の掛金は小規模企業共済等掛金控除の対象となります。企業型DCも同様に、企業が支払う掛金は損金として扱われますが、掛金の上限や運用益の取り扱いに違いがあります。
企業型DCでもiDeCo+でも、運用商品を選ぶのは従業員自身であり、その結果に対する運用リスクも従業員が管理します。ただし、企業型DCでは、企業が提供する運用商品の選定や情報提供に責任を負い、従業員が適切な選択ができるようサポートする役割があります。
まとめ
iDeCo+は、中小企業が従業員の福利厚生を充実させるための効果的な制度です。従業員の老後資金づくりをサポートするだけでなく、企業にとっても節税や人材確保の面で大きなメリットがあります。
ただし、導入には労使合意や社内規程の整備が必要で、事務処理の負担が増える点には注意が必要です。企業型DCとの違いを理解し、自社に最も適した制度を選ぶことで、従業員の満足度を高め、企業の成長につなげて行きましょう。