どの企業も、起業して事業を軌道に乗せるまでの間は資金繰りが大変です。創業融資などを頼りに何とかこの時期を乗り切る会社があるいっぽうで、資金がショートしてしまい残念ながら廃業する企業もあります。
ですが、こうした起業したての企業に対し、国や自治体などが支援してくれる制度があるのをご存知でしょうか?それが、本日紹介する補助金や助成金です。この制度は融資とは違うため、基本的には返済する必要がありません。ですから、起業を考えている人や起業したての人は、活用してみてはいかがでしょうか?本記事では、起業時に役立つ補助金や助成金について紹介するとともに、受ける時の注意点について解説します。
目次
補助金・助成金とは
補助金や助成金は、国や自治体などから支給されるお金のことです。どちらも公的資金から支給される点は同じですが、その性質や内容は大きく違います。そこでまず、補助金と助成金の違いから解説します。
補助金とは
補助金は、あらかじめ採択数や予算などが決まっているもので、申請したから誰でも受けられるという制度ではありません。申請者はそれぞれに事業計画書などを作成し、申請書類とともに提出します。審査では、これらの書類をもとに採択の可否が決められるため、受給できるかどうかは事業計画書をはじめとする書類をいかに説得力のある内容にするかが決め手となります。
助成金とは
助成金とは、基本的に要件さえ満たせば受給できる可能性の高い支援制度です。新型コロナウイルス蔓延時に経済産業省によって給付された持続化給付金や、厚生労働省によって給付された雇用調整助成金などは、原則として、要件を満たした上で申請すれば需給ができます。
補助金に関する注意点
補助金は、基本的に支払った金額(諸費用)に対して定められた割合(補助率)の分だけ支給されるものです。たとえば、500万円の事業に対して1/2の補助が受けられる場合は、先に500万円を支出し、申請をした後で250万円が支給されます。
諸経費の支払いが先で、補助金の受給はその後であるため、これらの点には注意が必要です。また、書類の不備などにより補助金が支払われないケースもあるため、くれぐれも書類の作成や証憑類の管理は細心の注意を払うようにしましょう。
起業時に役立つ補助金・助成金まとめ
次に、起業時に役立つ補助金・助成金を各シーンに分けてまとめてみます。
創業時におすすめの補助金・助成金
創業時に受けられる補助金・助成金の中でも、とりわけ多くの企業で活用されているのが以下の2つです。
- 創業助成事業
- 事業承継・引継ぎ補助金
創業助成事業
東京都内で起業した(する予定)の方におすすめなのが、創業助成事業です。東京都内で創業を計画もしくは創業後5年未満の中小企業者が対象となります。助成の対象となる諸経費には、従業員の人件費から事務所の家賃まで幅広く含まれているため、非常に使い勝手が良いと言えます。なお、助成率は3分の2以内、助成額の限度額は300万円(下限100万円)と定められています。
事業承継・引継ぎ補助金
事業承継によって起業した方にお勧めなのが、事業承継・引継ぎ補助金です。事業承継を機に経営革新などに取り組む中小企業が対象で、補助上限額は600万円、補助率は2/3と定められています。人件費から店舗の借り入れ、設備投資や改装費用など、様々な経費が対象費用となっているため、こちらも使い勝手の良い補助金と言えるでしょう。
従業員の雇用に関する補助金・助成金
従業員の雇用に関する補助金や助成金の中で、特にお勧めなのが以下の2つです。
キャリアアップ助成金
キャリアアップ助成金とは、アルバイトや派遣社員などの非正規雇用者を正社員にしたり、正社員の処遇を改善したりした場合に受けられる助成金のことです。一般的にどの企業でも、経費に占める人件費の割合は高いものですが、こうした助成金を上手に使えば創業時の人件費の負担を減らすことができます。
なお、キャリアアップ助成金には6種類のコースがありますが、例えばパート社員を正社員にした場合には、中小企業は12ヶ月で80万円、大企業は60万円の助成金が受給できます。
人材確保等支援助成金
従業員が働きやすい職場環境を作り、雇用管理の改善や生産性を向上させた場合に受けられる助成金が人材確保等支援助成金です。たとえば、雇用管理を実施して従業員の離職率を低下させた場合には、57万円の助成金が受給できます。
事業関連の補助金・助成金
実際の事業に関連する補助金・助成金のうち、お勧めなのが以下の2つです。
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金とは、中小企業者が革新的なサービスの開発や試作品開発、生産プロセスの改善などを行うための設備投資を支援するための補助金です。通常枠や回復型賃上げ・雇用拡大枠など5つの枠ごとに補助率や補助金額が定められています。たとえば従業員5人以下のデジタル枠であれば、補助率が2/3で補助金は最高750万円が支給されます。
IT導入補助金
IT導入補助金とは、DX化を促進して生産性を上げた企業に対して支給される補助金です。たとえば顧客管理システムやPOSレジなどの導入費用に対して補助金が支給されます。なお、補助率は1/2で、最高450万円が支給されます。
補助金・助成金を受けるときの注意点
最後に、補助金や助成金を受ける際の注意点について解説します。
申請してから受給までに1年前後かかる
補助金や助成金は、起業したてで資金繰りの落ち着かない経営者にとって本当にありがたい制度ですが、残念ながら本当に困っている時に支給されるわけでない点には注意しておかなければなりません。
たとえば、補助金であれば、基本的に事業の実施期間に支出した諸経費に対して補助率を掛けた金額が支給されます。したがって、実施期間経過後に資料をまとめて提出し、その内容が審査され、実際に補助金が振り込まれるまでには諸経費を支出してから1年前後かかってしまいます。
助成金の場合は申請先にもよりますが、それでも申請から受給までは6~8ヶ月程度の時間は必要となるでしょう。
いずれにしても、申請してすぐに受給できるわけではないため、「補助金・助成金ありき」で計画を実施せず、補助金・助成金がなくても成り立つような資金繰りを考えておかなければならないでしょう。
不正受給をすると行政処分や刑事罰を受ける
補助金や助成金の受給要件を満たしているように偽装し、不正受給をすると、補助金適正化法に抵触してしまいます。そうなると、交付決定の取り消しや補助金などの返還はもちろん、行政処分や詐欺罪での刑事告発をされてしまう恐れがあります。
最悪の場合、裁判により刑事罰を受けることも考えられ、また一度不正受給をしてしまうと、本当に受給要件を満たしていても申請することができなくなってしまいます。そのため、故意による不正受給は絶対に行わないように注意しましょう。
まとめ
どの企業でも、起業したての頃は資金繰りが大変です。こうした企業に対して、国や自治体は補助金や助成金の制度を充実させているのですから、こうした支援は積極的に活用すべきでしょう。補助金によっては2/3もの費用を補助してもらえるだけに、上手に組み合わせれば、実際の支出額を3割程度に抑えられます。
ただし、補助金や助成金は、諸費用を支出した後でしか振り込まれません。その間は苦しい資金繰りでやり繰りしなければならないため、計画的に実施することが大切です。また、申請書類などの作成には専門知識が必要で、書類に不備があれば申請は通りません。
そのため、資金繰りなどの相談やアドバイスを受けたい方や、申請書類の作成に自信がない方は、税理士などの専門家にアドバイスを受けながら進めて行くと良いでしょう。