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会計が苦手な経営者でも知っておきたい法人税の中間納付

会計が苦手な経営者でも知っておきたい法人税の中間納付

法人を設立して順調に利益を上げ、決算を迎えると法人税を払うことになります。法人税は利益に対しておおむね3割程度の税率で課税されるため、その金額に驚いた経営者の方も少なくないのではないでしょうか。

そのため、「来年の決算でも法人税を払うことになるのなら、今のうちから積み立てておこう!」と思われる経営者の方もいらっしゃるかもしれませんが、残念ながらそれだけでは十分ではありません。なぜなら、法人税には中間納付という制度があるからです。

そこで本記事では、法人税の中間納付とはどのような制度で、中間納付の計算方法や納付回数はどのように決まっており、納付するメリットにはどういったものがあるのかなどについてじっくりと解説していきます。

法人税の中間納付とは

法人税の中間納付

法人税の中間納付とは、事業年度の開始から6ヶ月を経過した時点で、予定される年税額の一部を前払いするように定められた制度のことです。

たとえば4月1日から翌3月31日までを一事業年度と定めている会社であれば、6ヶ月を経過した時点が10月1日となるため、そこから2ヶ月以内の11月30日までに中間納付を行います。

なお、中間納付で納める納税額については、後述の2つの計算方法のどちらかを選択します。また、中間納付はあくまで納税額の一部を前払いする制度ですから、中間納付をしたからと言って確定申告をしなくても良いわけではありません。したがって、法人税は基本的に中間納付と確定申告の2回の納付が必要となります。

法人税の中間納付が必要でない法人

中間納付が必要でない法人とは

先程、法人税は基本的に中間納付と確定申告の2回の納付が必要だと述べましたが、実は中間納付が必要でない法人もあります。それは、以下の法人です。

  • 前年度の法人税額が20万円以下の法人
  • 設立初年度の法人
  • 公益法人

前年度の法人税額が20万円以下の法人

前年度の法人税額が20万円を超える法人は、法人税の中間納付を行うことが定められています。そのため、前年度の法人税額が20万円以下の法人であれば、中間納付を行う必要はありません。ですから、前年度が赤字の場合や、黒字でも法人税の納税額が20万円以下であれば、中間納付をする必要はありません。

設立初年度の法人

設立初年度の法人には、前年度が存在しません。したがって、中間納付の必要はありません。

ただし、同じ設立初年度の法人であっても、合併で新たに設立された法人の場合は扱いが違うため注意が必要です。合併で新設された法人の場合は、合併前の法人の前年度が基準となるため、その納税額が20万円を超えていれば法人税の中間納付をしなければなりません。

公益法人

法人税の中間納付の対象となるのは、一般の株式会社や合同会社などです。NPO法人や公益法人などは営利事業を行っていないため法人税の対象とはなっておらず、そもそも法人税は課せられていません。

もちろん前年度の法人税の納税額もないわけですから、NPO法人や公益法人などには法人税の中間納付の義務はありません。

中間納付の計算方法

計算方法

法人税の中間納付の計算方法には以下の2種類があり、どちらを選択するのかは納税者が自由に決めることができます。

  • 予定申告による納付
  • 仮決算による納付

予定申告による納付

予定申告による納付とは、前年度に納めた法人税額をベースに中間納付額を算出する方法です。具体的には、以下の算式により中間納付額を算出します。

 中間納付額=前年度の法人税額÷前年度の月数×6

たとえば、前年度の法人税額が120万円の場合であれば、中間納付額は以下のようになります。

中間納付額=120万円÷12か月×6=10万円×6=60万円

仮決算による納付

上述のように、予定申告による納付は税額計算も非常に簡単で、経理に負担がかかることもあまりありません。しかし、予定申告には1つだけ問題があります。それは、前年度の法人税額を税額算出の基準としている点です。

前年と比べ今年の業績が大幅に悪化してしまうと、昨年を基準に計算された中間納付の税額を用意するのが大変です。こういうケースで選択すると良いのが、仮決算による納付です。

6ヶ月が経過した段階で仮決算を組み、そこで算出した税額を法人税の中間納付とすれば、今期の業績に合った法人税額を中間納付として納税できます。

「それほど便利な方法があるのなら、これからは毎回仮決算による納付をしたい!」と思われる経営者もいるかもしれませんが、残念ながらそれをしている中小企業はあまりありません。なぜなら、経理に大幅な負担がかかってしまうからです。

決算業務が大変なのは多くの経営者がご存知だと思いますが、法人税の中間納付も基本的には決算業務とほぼ同じです。したがって、かなりの作業量が必要となります。

そのため、実際に仮決算による納付が選択されるケースは、前期と比べ今期の業績が大幅に悪化した場合などに限られると言えます。

中間納付の期限について

法人税の中間申告及び納付は、「事業年度開始の日から6ヶ月が経過した日から2ヵ月以内(法人税法第71条)」と定められています。

たとえば、事業年度が4月1日から翌3月31日であれば、以下のようになります。

  • 事業年度開始の日・・・4月1日
  • 事業年度開始の日から6ヶ月が経過した日・・・10月1日
  • 中間納付の期限・・・11月30日

予定申告を選択する場合は、税務署から送られてきた予定申告書に必要事項を記載して返送し、11月30日までに法人税を納付すれば完了です。

いっぽう仮決算を選択する場合は、11月30日までに申告書類を作成し、算出された法人税額を11月30日までに納めなければなりません。

法人税を中間納付するメリット

最後に、法人税を中間納付するメリットについて解説します。

メリット

法人にとってのメリット

法人税の中間納付をしておくと、その分だけ確定申告で納める法人税額が減ります。1年間でトータルすれば、中間納付をしてもしなくても最終的な税額は変わりませんが、「資金繰り」という観点から見れば、両者はまったく違います。

もし中間納付がなければ、確定申告で法人税を全額納めなければなりません。法人税は利益(正確には、法人税法上の所得金額)に対しておおよそ3割程度の税率で課税されます。

1年間頑張って稼いだ利益の3割を確定申告で支払うわけですから、決して少ない額ではありません。それを確定申告時に全額支払うことになると、資金繰りが難しくなるケースが考えられます。

したがって、法人を経営するうえで資金繰りに大きな影響を与えず、税負担を平準化させることができるのが、中間納付の大きなメリットとなります。

国にとってのメリット

法人税の中間納付をなくしてしまうと、国にとっては税金の徴収が月ごとに偏り、安定した税収を実現することが難しくなってしまいます。また、上述のように法人の資金繰りを悪化させてしまうため、税金の滞納や倒産による未納税が発生する温床を作りかねません。

したがって、国にとっては、月々の安定した税収を実現し滞納や徴収漏れを防ぐというメリットがあります。

まとめ

法人税の納付は、確定申告の時だけではありません。前年度の法人税額が20万円を超えた場合は、本記事で解説したように、前年度のおおむね半額を中間納付として納めなければなりません。

したがって、中間納付も考えた資金繰りを準備しておかなければなりません。ただし、前年度と比べ業績が大幅に悪化した場合には、仮決算による納付を選択することも可能です。

ですが、中間期にこうした作業を行うのは時間的にも非常に難しいため、その際には税理士などの専門家に相談してみることをお勧めします。

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